COPD Up to Date

監修:東北大学大学院 医学系研究科 内科病態学講座 呼吸器内科学分野 教授
杉浦 久敏 先生

COPDにおける最適医療を⽬指した治療概念“Treatable traits”の発展

近年、個々の患者によって炎症、酸化ストレス、⽼化など様々な病態が⼊り混じった多様な病態を呈することがわかってきたCOPDですが、それとともに治療への可能性も拓けてきました。様々な程度の可逆性を認める気流閉塞を伴う気道の炎症に着目し、その抑制も新たな可能性の⼀つです。そして、多様な病態を呈するCOPDの治療において、急速に発展しているのがTreatable traitsという治療概念です。
本コンテンツでは、このTreatable traitsについて解説するとともに、 Treatable traitsに沿ったCOPDの治療戦略について紹介します。

# 3 : Treatable traitsに沿った治療戦略

COPDの病態は進⾏性であり、⻑期にわたり治療を⾏う必要性があるため、管理⽬標が重要となってきます。
COPDの管理⽬標は、①現状の改善、すなわち症状およびQOLの改善、運動耐容能と⾝体活動性の向上および維持に加え、②将来リスクの低減、すなわち増悪の予防、疾患進⾏の抑制および健康寿命の延⻑、です。
COPDの管理目標の達成には、安定期のみならず増悪期や終末期の対応を含めた管理計画を立て、タバコ煙などの原因物質曝露からの回避、病態や重症度に合わせた薬物療法や非薬物療法を実施します。
肺合併症と全身併存症の診断・評価・治療は、現状の改善および将来のリスクの低減につながると期待されています。
管理⽬標はCOPDという疾患をみていく上で、重要なTreatable traitsといえます。

COPDの管理目標

日本呼吸器学会COPDガイドライン第6版作成委員会. COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン 第6版 2022, 
メディカルレビュー社, 2022, p.92-93

個別化最適医療を⽬指したCOPD管理のアルゴリズム

⽇本呼吸器学会が作成した安定期COPD管理のアルゴリズムにおいて、症状、増悪がTreatable traitsとして採⽤されたことは、患者個々に合った個別化最適医療を⽬指すことにつながります。
そして、個別化最適医療の実現を⽬指すためには、症状、増悪などの臨床像に対する評価を、初期治療導⼊時期のみならず、病状の変化や治療の変更に合わせて、繰り返し患者の臨床像を評価する必要があります。

安定期COPD管理のアルゴリズム

日本呼吸器学会COPDガイドライン第6版作成委員会. COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン 第6版 2022,
メディカルレビュー社, 2022, p.96-98より改変

COPD治療における重視すべきTreatable traits

COPDは様々な病態からなる疾患であり、そのため治療において重視すべきtraitsが多数存在します。特に、COPDの管理⽬標からみて、症状および呼吸機能の改善と増悪の抑制が、COPD治療における重視すべきtraitsとして考えられます。
COPDのTreatable traitsであるType2炎症は、患者の気道炎症を重症化させ、増悪リスクも上昇させます。
そのため、治療可能という観点から考えると、ICSなどのステロイド薬、生物学的製剤などで治療可能なType2炎症を制御することは非常に重要です。

COPDにおけるTreatable traits

【監修】東北大学大学院 医学系研究科 内科病態学講座 呼吸器内科学分野 教授 杉浦 久敏 先生
Pérez de Llano L et al. Int J Chron Obstruct Pulmon Dis 2020; 15: 2091-2100

監修医からのコメント

東北大学大学院 医学系研究科 内科病態学講座 呼吸器内科学分野 教授
杉浦 久敏 先生

COPD治療のもっとも重要な目標は生命予後の改善ですが、多様で複雑なCOPDの病態・症状のうち、ICSや生物学的製剤で治療が可能であるという観点から、COPD治療においてType2炎症を検出・特定することが重要といえます。

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